麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
助けてくれたことは有難いが、なぜ自分がここにいるのか聞き出さなければならない。
「....俺の邸だ」
「....なぜ、私はリードさんの邸にいるのですか?」
バクバクと心臓がうるさい。
胸の前で両手を重ねて、握りしめる。
「....俺が....俺が、お前を攫った...からだ」
「.......」
やはり。モモネリアは、攫われた。
しかも、今目の前にいるこのリードネストという狼獣人に。
「....理由をお聞きしても?」
落ち着いて尋ねることができたのは、自分でも驚いた。
おそらく、初めから攫われたことは予想していたし、顔こそ見えなかったが、攫われた時担ぎ上げられたのは、リードネストのような大きな人だったのは覚えていたからだろう。
「......お前は、俺の....番だ」
「....番?」
「あぁ。お前の姿を一目見た瞬間、胸が激しく脈打ち騒いだ。お前から、熟した果実のような甘く蕩ける香りがして、吸い寄せられた。一度嗅いだら、忘れられない。この手で、お前に触れたとき、今まで感じたことがないほど猛烈な愛おしさに襲われた。守りたいと思った。そのわずかな時で、お前は俺の全てを掻っ攫っていったんだ」
「.....それで、私を攫ったの、ですか?」
リードネストは申し訳なさそうに耳を倒して、泣きそうな顔をしながらも、何も答えない。
どうやら攫ったことは、悪かったと思っているようだ。
激しく揺れていた尻尾は、ピタリと止まり、力無く垂れ下がっている。
「....悪かったと、思っている。本当にすまない....。だが....もう俺はお前を手放せない。ここから、帰してやれない。.....頼むから、俺のそばに居てほしい」
縋るように、そっと手を握られる。
だが、モモネリアはその手をやんわり拒否した。
「......無理です。私を帰してください」
その言葉を聞いて、リードネストはひどく傷ついた顔を見せる。
だが、彼は首を振る。
「それこそ、無理だ。無理やり連れてきて、本当に申し訳ないが...愛するモモネリアの願いでもそれは聞けない。気に入らないところは、お前好みになれるよう努力する。いや、必ず変わる。....この命をかけて、生涯お前だけを愛し、何よりも大切にすると誓う。お前を傷つけるすべてのものから守る。だから....俺を好きになってくれないか?」