麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「カーヴィン、もういいだろう」

 話しすぎだ、とリードネストはカーヴィンを強めの口調で嗜めた。


 カーヴィンは、「失礼致しました」と礼をとり、またいつものピシッとした佇まいに戻った。


「......リード、本当?」


 リードに事実なのか問うと、たっぷり間があり、漸く消え入りそうな声で、答える。


「..........本当、だ。.....モモネリアは、愛らしすぎる。姿かたちはもちろん、中身まで清らかだ。俺や使用人たちに対しての気遣いには、毎日癒されている。花や植物を愛でて、菓子作りも得意で女性らしく、性格も素直だ。読書や刺繍といった自分の好きなことに対してどこまでもまっすぐで一生懸命なのも好ましい。まぁ、例え男らしくても、凛々しくても、悪巧みをしていても。どんなモモネリアも、大変魅力的で、素晴らしいのは間違いないが。辛い時でも、他人を気にかけ、己の刃を決して他者に向けない。そんな強さを持っている。俺に甘える時なんて可愛すぎて。出会ったきっかけは番だからだが、お前を知れば知るほど、心臓が高鳴ってこれ以上ないほど早鐘をうつ。いつか心臓が止まってしまうのではと怖いくらいだ。お前が気を許せば、全てを魅了してしまう。モモネリアは、甘い香りを漂わせる美しい花だ。お前がそこにいるだけで煩わしい羽虫たちが、お前の美しさと香りに誘われて寄ってきてしまうだろう。その砂糖菓子のような声で話す言葉はどれもふわふわ優しくずっと聞いていたくなるし、お前の仕草がどれだけ男を虜にするかわかっていない。少し微笑むだけで、周りの男どもがその可愛らしさに勘違いしてしまう。俺からお前を奪おうとするかもしれない。もちろん、必ず俺が守るが。.....お前がそんな輩の目に映るだけでも、不愉快でたまらない。お前は、俺のものだろう?.....絶対誰にも渡さない」


 途中想像したのか、消え入りそうだった声が段々低く凄みのある声に変わる。


 じわじわと全身でリードネストの独占欲と嫉妬心を感じて、自分がどれほど愛されているのかを実感させられた。

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