静かなる、恋の包囲網
「この状態の君を1人にはできない。家に連れて行くが、いいよな」

運転席でまっすぐ前を向いたまま、雄平は確認するように言葉にする。

「はい」

塔子のほうも、今1人になる自信がない。
一緒にいてもらえるほうが心強いと素直に感じられた。
約1ヵ月ぶりに雄平のマンションを訪れることが、うれしいような、不安なような、戸惑う気持ちはある。
それはきっと、直属の上司と部下となってしまった2人がプライベートの時間で関わることで、関係が崩れてしまうのではないかという不安だろう。
しかし今はそんなことを言ってはいられない。
塔子は小刻みに震える体を必死に抑えていた。

「なんだか小腹がすいたな。帰ったら何か取ろうか」
「そうですね。よかったら何か作りますよ」

雄平との時間に慣れてきたせいか、塔子は少しずつ自分の思いがすんなりと口に出るようになった。

「じゃあ、頼むよ」
「はい」

秘書課の歓迎会でおいしいお料理をいただいたつもりだったが、安心したら急に小腹が空いてきた。
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