仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

✦ ✦ ✦ ✦


「え? 社交パーティーに私が……ですか?」

夜のリビングに私の素っ頓狂な声が響いた。

お風呂から上がり、薄グレーのルームウェアに着替えた夜見社長は、昼間のスーツ姿とはまた違う柔らかな色気を纏っていた。

向かいのソファに座って私を見つめながら、彼がためらいがちに口を開く。

「突然申し訳ありません。父と母が、どうしてもあなたを皆に紹介したいと言ってきかず……」

「ご両親がそんなことを?」

「ええ。ふたりはどうやら私が一生独身を貫くものだと思い込んでいたようで。今回の結婚がよほど嬉しかったらしく、あちこちで触れ回っているんですよ」

「……そうだったのですね」

大事な話というのが離婚の件でなかったことにひとまずホッとしつつ、これはこれでまた大変な問題だ。

「すごく光栄なのですが、本当はまだ出会ってまもない私が隣に並んだら、皆さんに怪しまれてしまうのではないでしょうか。その……愛のない結婚……だということが」

「まさに。厄介なのはそこなんです」

一拍置いて、彼が続ける。

「私たちが偽装夫婦だということを知っているのは、秘書のふたりと、あとはコンシェルジュ長の柳さん。その三人だけなんですよ」
< 102 / 209 >

この作品をシェア

pagetop