仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「あなたがここに四年間勤めたという記録はどこにも残らない。もちろん別の配属先への推薦状も出さない。すべて白紙です」

「っ……」

彼の完璧な微笑みは一ミリも崩れない。まるで慈悲深い提案でもしているみたいだ。

指先が少しずつ温度を失っていく。

生まれながらの王者──いや、悪魔。

冷たい指先でなぞられたかのように、全身がぞくりと反応した。
同時に、それとはまた別の、奇妙な震えが胸に広がるのを感じる。

人の血が流れていない。彼の噂のひとつに、たしかそんなものがあったっけ。

本人を目の前にした今、その噂すら生ぬるく思えた。

あまりに強い引力に心をわし掴みにされる。底知れぬ冷酷さに、あやうく美しさを見出してしまいそうだ。

再び視線が絡む。

こちらを見つめる瞳がどれだけ危険な色を孕んでいようと、私はもう、彼から目を逸らすことはかなわなかった。
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