仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
『成田さん、15階の白村様から『今すぐいつものトリュフオイルを調達してくれ』とのご要望が……! どうしましょう、今日中には無理ですよねっ!?』
彼のことを考えて温かい気持ちになったのもつかの間。
インカムから飛び込んできた同僚の悲鳴に近い声を、キーボードを叩きながら冷静に受け止める。
「専門店直営の店舗がたしか都内にあったはずです。在庫があればすぐにバイク便を手配しますので、エントランスに到着したら受取をお願いします」
『わあ、助かります! ありがとうございます……!』
そのあとも業務は次々に舞い込んできた。
リムジンの手配や、来客用の駐車場スペースの確保といった基本的なものから、海外サイトのオークションの落札代行というイレギュラーなものまで様々で。
今日も時間が過ぎるのが、本当にあっという間だった。
「成田さん、お疲れ様です」
スタッフルームで休憩を取っていると、遅番で出勤してきた柳さんが顔を覗かせた。
慌てて立ち上がり、お疲れ様ですと挨拶を返す。
彼はおもむろに周囲を見渡すと、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。
「今なら他に誰もいませんね。遅くなりましたが、ご結婚おめでとうございます」
「っ、ありがとうございます……」
そういえば、柳さんは夜見社長と私の結婚が偽装だということを職場で唯一知っている人物だった。