仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

「ところで、仕事のほうは順調ですか?」

半分以上食べ終えたところで、再び彼が口を開いた。

「はい……。毎日、目まぐるしくてすごく大変ですけど、その分やりがいがあってとても楽しいです」

「それならよかったです。柳さんからもあなたの活躍は聞いていますよ」

「恐縮です……。……ところで、あの」

指摘するべきか迷いつつ、彼を見つめる。


「統悟さんは、敬語じゃなくて大丈夫ですよ……?」

すると彼ははっとしたように動きを止めて。
それから小さく笑った。

「そうだったね。うっかりしていた」

そのふとした自然な笑顔に、胸がぎゅっと締めつけられる。
どうやら私は彼の完璧じゃない笑顔にめっぽう弱いみたいだ。


「じゃあ、何か困ったことは?」

「困ったこと……ですか?」

「例えば……そうだな、変な客に絡まれたりとか、男にしつこく迫られたりとか」

「いえ、特にはありません」

正直に答えたのに、なぜか彼は疑わしげな視線を向けてくる。

「……たとえ口説かれていたとしても、君は気づかなさそうだな」

低い声で何か呟くのがわかったけれど、聞き取れず。
首を傾げて見つめ返すと、なぜか目を逸らされてしまった。

どこか不服そうに見えたのは……気のせい……?
< 130 / 207 >

この作品をシェア

pagetop