仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
そこまで言って、慌てて口をつぐむ。

統悟さんの声には人を従わせる魔力のようなものがあるのだと思う。そうじゃないとおかしい、こんな恥ずかしいことを平気で口走るなんて。

案の定、統悟さんは肩をゆらして笑い始めた。

みるみるうちに首から上が熱を持つ。


「あの、実は今のは違うんです、ちょっと……そう、冗談を言ってみたくなって」

「はは、言いわけまで可愛い」

「っだ、だからもう……からかわないで……」


――ください。

そう続けるはずだったのに、あまりの恥ずかしさに語尾が消え去ってしまった。

彼と目を合わせられないどころか、涙目にまでなってくる始末。
偽装のための訓練は前途多難もいいところだ。今は笑ってくれているけれど、内心はうんざりしているんじゃないだろうか。

「離婚しよう」と言われる日はそう遠くないかもしれない。


「本当に、申し訳ございません」

「なにもそこまで思いつめた顔をしなくてもいいが」

「だって、私よりはるかに忙しい中で毎日のようにお時間をつくってくださってるのに、申し訳なくて……」

少しのあいだ沈黙が流れた。


「俺だって、君が毎日隣にいる中で平静を保つのがやっとだけどね」

やがて耳元で低く響いたのは、そんな声。思わず顔を上げるけれど、ちょうど彼がミルクをすすったおかげで表情まではわからなかった。

どういう意味ですか? と聞く勇気もなく、その日は、昨晩途中で切り上げた映画の続きを観て終わった。

結末は……よく覚えていない。
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