仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

「では、馴れ初めはそういう設定で」

「……じゃあ、私のほうは、アプローチを受けているうちに統悟さんの誠実さに惹かれていった……と」

「わかりました。それで大丈夫です」

統悟さんは真剣な表情で手元のタブレットに情報を打ち込んでいく。
まるで重要なプロジェクトの戦略会議でもしているみたい。

私たちは偽装で成り立夫婦関係なのだと改めて突きつけられた気がして、ほんの少し寂しくなった。


その後も細かい設定をひたすら詰めていった。

統悟さんが私にどのようなアプローチをしたのか。
最初のデートはいつ、どこで、何をしたのか。

それから、付き合った記念日、お互いの好きなところ、喧嘩の内容から仲直りの方法……などなど。

やがて出来上がった私たちの幸せな記憶は、皮肉なほどに完璧だった。


「これなら、どのような角度から質問されてもきちんと対応できそうですね」

「これなら、どのような角度から問われてもきちんと対応できそうですね」

統悟さんが画面からふと顔を上げて、私を見る。


「あと問題なのは……距離感か」

「距離感……」

「これからお互いの時間が合う日は、寝る前の数時間、こうしてリビングで一緒に過ごすというのはどうですか?」

有無を言わせぬ声に、私は考える間もなく「はい」と返事をしていた。
ワンテンポ遅れて意味を理解して、じわりと顔が熱を持つ。

「今日はまだ寝るには早いですし……。少し、隣に座っても?」

「へっ?」
< 132 / 207 >

この作品をシェア

pagetop