仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

肌に触れる夜風は、思いのほかひんやりとしていて心地よかった。

オリゾンヒルズの敷地内にある緑に包まれた公園を、統悟さんと並んで歩く。
通路はオレンジ色のライトで幻想的に照らされているせいか、どこか現実味がない。

この静かな世界の中で聞こえるのは、私たちの足音と、木の葉のかすかなざわめきだけ。

彼とふたりで緊張しているはずなのに、こうして自然の中を歩いていると、荒んでいた心が不思議とおだやかになっていくのを感じる。


「都会の中とは思えないほど静かですね」

「そうだな。この時間だとあまり人もいないし、心を落ち着けるのにはちょうどいい」

そう言って、彼はおもむろに天を仰いだ。

思わず見とれた数秒後、もしかして、と思う。

私が落ち込んでいることに気づいたから、ここへ……?

いや、もしかして、じゃなく、絶対にそうだ。じゃなきゃ、脈絡もなく「外に出よう」なんて言うはずがない。

その刹那、強い風が吹いて、木々がざわざわと音を立てた。それに紛れるようにして、心臓の音が一度、大きく響く。

ふいに鼻の奥がツンとして、思わず唇を噛んだ。

あれ……? 急にどうして……。

幸い、涙をこらえることはできたけれど、胸の奥から、またべつの何かがこみ上げてくるのを感じる。
ぎゅうぎゅうと締め付けて、苦しいくらいだ。


「せっかくだし、奥の泉まで行って帰るか」

「あ……はい」

つい反応が遅れてしまう。

服の上から心臓をそっと押さえ、すこし遅れて彼のあとに続いた。
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