仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
真正面からそんなことを言われるなんて思ってもみなくて、一気に顔が熱くなる。
統悟さんはそのままこちらへ歩み寄ると、そっと私の頬へ触れた。
「こんな姿を他の連中に見せるのかと思うと、正直面白くないな。やっぱり君だけ欠席にしてまおうか」
冗談めかした口調なのに視線だけは妙に真剣で、どきりとする。
どこか熱に浮かされたような心地で見つめていると、ゆっくり顔が近づいてきて、反射的に息を呑んだ。
その直後、タイミングを見計らったかのようにスマホが鳴る。
「運転手からだ。もう出る時間だと」
「そ、そうでしたか」
「……残念」
耳元で静かな声がして、ばっと顔を上げる。
けれど統悟さんは、もう背を向けてしまっていた。
今の、どういう意味……?
会場へ向かう車中、窓の外を流れる夜景を眺めていると、ふと、私の手に統悟さんの大きな手が重なった。
どきりとして体が固まる。
いけない、もし運転手の方に見られちゃったら……。
───いや、夫婦なんだから見られてもいいんだっけ。
───いや、そっか、もう偽装のための演技が始まってるんだ。
なんて内心パニックになりながら、頭のわるいセルフツッコミを繰り返してしまった。
耳元でどくとくと激しい鼓動の音がよく聞こえる。
まだ会場にもついていないというのにこんなにもどきどきに支配されていては、身が持つかどうか……。
「……理優」
不安がよぎったタイミングで名前を呼ばれ、はっと顔を上げた。
「前にも言ったが、パーティー会場には俺をよく思わない連中がたくさんいる」
彼はそう言うと、おもむろに窓のほうへ視線を向けた。
その横顔には、どこか暗い影が落ちているように感じる。
「……会場に入れば、君も多くの好奇と悪意に晒されるのは確実だ。俺の妻になるというのは、そういうことなんだよ」
「……はい」