仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
浮世を見下ろす城
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気づいたときには、もう自宅の近くだった。

ここに至るまでいつものように電車に乗って、改札をくぐり、交差点を渡ってきたのだろうけれど、その間の記憶がどうにも薄い。

考えるのに夢中になりすぎていたみたいだ。

一日はもう終わりを迎えようとしているのに、私ときたら、緊張で胸が高まった状態からいまだに下りてこられずにいる。

……現実、だったんだよね?

おもむろに鞄を確認すると、夜見社長から手渡された封筒がたしかにそこに入っていた。

異世界から戻ってきたような気分だけど、彼の話に頷いてしまった以上覚悟を決めなくちゃいけない。


──『俺はもうずいぶん前からあなたの仕事ぶりに惚れ込んでいるんですよ。成田さん』


ふと、夜見社長の言葉が頭をよぎる。

……あはは、まんまと言いくるめられちゃったなあ……。

心の中で苦笑いをしながら、いつものコンビニの角を曲がった。

────そのとき。

「成田、おかえり。今日はちょっと遅いんだな」

聞き慣れた男性の声がして、はっと顔を上げる。

「……五十嵐くん」
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