仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
柳さんを見送ったあと、私たちは再びふたりきりになった。
────のも、つかの間。

「やあ、統悟君!」

背後からそんな弾んだ声が飛んできた。

「久しぶりだね! 今仕事でアメリカに住んでるから今回は欠席の予定だったんだけど、今回、君が奥様を連れてくるらしいって聞いてさ、急遽駆けつけさせてもらったよ〜〜!」

快活な足取りで近づいてきたのは、華やかなスーツに身を包んだ男性だった。

統悟さんはすぐにそつない微笑みを浮かべた。
────けれど、その一瞬、瞳の奥がわずかに揺れたように見えた。

「……お久しぶりです。お越しいただけて光栄です……」

定型通りの挨拶を返しながらも、やはり、どこかためらいを感じる。

私は思わずシャンパングラスを握りしめた。

おそらく彼は、目の前の相手を記憶のリストと照らし合わせるためのフックを見失っているのだ。

声も、体格も、彼が知っているはずの情報と一致していない。

……あれ……? でも私、この人の顔をどこかで……。

次の瞬間、一ヶ月ほど前に流し読みした経済系ネットニュースのとあるトピックが頭をよぎった。


「もしや……徳井社長、でいらっしゃいますか?」

勇気を出して一歩前に出た。
なかば祈るようような気持ちで尋ねると、男性は「おや」と目を見開いた。

「驚いたな、統悟君。奥様に僕のことを話してくれていたのかい?」
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