仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

「……やっ……」

振り払おうとした手は虚しく空を切り、そのまま彼に捕まってしまう。

「やめて、ください……」

「はは、怯えちゃってかーわい」

無理やり引き寄せられ、距離がさらに近づいた。

パーティー会場のほんの隅を選んだばかりに、周囲には誰もいない。


「俺、君みたいな子いじめるのが好きなんだよね。もっと困った顔見たいな。好きでもない男にキスされたら嫌だよね? 泣いちゃうよね?」

この人……何を言ってるの……?

ばくばくと心臓が冷たく早鐘を打つ。

そうしているうちにも相手の顔がどんどん近づいてくる。
その指先が、私の唇をねっとりとなぞった。


「ほら、こっち向いて?」

逃れようにも力が入らない。
…………もうだめだ……。

絶望が胸を支配して、ぎゅう、と固く目を閉じた。


────けれど、その直後。

私の体を掴んでいたはずの手が、ふっと離れていく気配がした。

……、……え?

おそるおそる顔を上げた矢先、驚く。
そこには、いつの間にか統悟さんがいた。

私に迫っていた男性の腕を掴み上げ、にこやかな笑顔を浮かべている。

……そう、あくまで、にこやかな────。
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