仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
ふたりで落ちる愛
✦ ✦ ✦ ✦


あの日の夜、自分の名前を書いた離婚届を、リビングのテーブルに置いてきた。


────あれから一ヶ月。

もう終わったことだと自分に言い聞かせても、目を閉じれば昨日のことのように思い出してしまう。

初めて目が合った日のこと。
五十嵐くんから助けてくれた日のこと。
ドレスを一緒に買いにいった日のこと。
パーティーの後、初めて抱かれた日のこと。

統悟さんの体温は、まだしっかりと胸の奥に残ったまま……。


私は現在、元いたマンションへと戻り、再びコンシェルジュと働いている。

五十嵐くんや笹井さんはクラルテでの私の事情を知っていたけれど、『成田がそんなことするわけない』と言ってくれて、しかも私以上に怒ってくれて。
ふたりのやさしさには何度も涙がこぼれた。

おかけで、ここでの仕事もとても充実している。

ただ……クラルテにいたときのように心からの笑顔を浮かべることは、少し難しくなっていた。


「成田先輩! これ見てくださいよ!!」

笹井さんにそう声をかけられたのは、お昼休みのことだった。

メッセージを通して送られてきたURLを開いた瞬間、心臓が止まりかけた。

だって、その記事の見出しには、私が愛した人の名前が記されていたから。
< 182 / 207 >

この作品をシェア

pagetop