仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
私の家までの約二百メートルを、他愛もない話をして歩く。
生活のことや仕事のこと。同い年の五十嵐くんとは気兼ねなく話すことができて、本当にありがたい存在だ。
──って、そういえば。
道の途中でふと気づく。
今度お礼をするなんて言ったものの、自分は来週には別のマンションへ異動になるのだった。
五十嵐くんは同僚で、なにより、唯一の同期。
真っ先に伝えるべき相手……だよね……。
どう切り出すべきか悩んでいるうちに、あっという間に自宅の前まで着いてしまった。
……伝えるのは明日でもいいかな。たしか五十嵐くんとシフト被ってたし……。
そう思いながら彼を振り返る。
「送ってくれてありがとう。あとスムージーも。五十嵐くんも帰りは気をつけてね」
「ああ。……成田、ところでさ」
「うん、どうしたの?」
見つめ返しても、すぐには返事がなかった。
五十嵐くん?と首を傾げれば、彼はようやく口を開いた。
「成田、もう彼氏作る気ないってほんと?」
「っ、え?」
「この前、笹井さんに聞いたんだよ。成田がそう言ってたって」