仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「俺も似たようなものです。あなたが置いていった離婚届を目にした瞬間、血の気が引いてしばらく他のことが手につかず……。クレームやあなたの処分についての件は後日、もうひとりの秘書の黒峰から聞いて知りました」
なにか口にすればさらに涙が溢れてきそうで、私は言葉をつまらせた。
「……無理になにか話そうとしなくていいですよ。俺の話には、ただ黙って頷いていてください」
私のそんな気配を察したのか、やさしい声でそう言う統悟さんに、涙はかえってこみ上げでくるようだった。
そのあともひとつひとつ、丁寧に話をしてくれた。
私へのクレームの件を知ったとき、統悟さんはすぐにそれが間違いだわかりながらも周りを納得させるための証拠がなく、手間どったと言っていた。
せめて一言だけでもと、統悟さんは何度も私に連絡をくれようとしていた。
けれど、あろうことか私は彼との繋がりを自ら断ち切り、着信拒否という最悪の形で拒絶してしまっていた。
せめて私に連絡をして安心させようとしたけれど、あろうことか私が統悟さんの連絡先を消して着信拒否までしていたせいで繋がらず。
私の家を訪ねることも考えたけれど、私が電話に出ないことが自分に対する答えだと思うと踏み込めなかった……と。
こんなにもすれ違っていたなんて思わなかった。
そして、こんなにも私のことを考えてくれていたなんて思わなかった。
たとえこの恋が叶わなくても、私はもうそれだけでいいと思えた。