仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

五十嵐くんの言うとおり、実家にいる母から「いい人はいないのか」とか「紹介しようか」とか、毎週のように遠回しに急かされているのだけれど。

「今はまだ、ほんとに考えてない……かな。まあ、ゆくゆくは……って思わないこともないけど」

「だったら早いほうがいいよ。成田、よく住人からも口説かれてたりするだろ。この前の男は妻子持ちだったし。ああいうクソみたいな奴に捕まる前に手を打っとかないと」

「ちょ……、ちょっと待って。いきなりどうしたのっ? 口説かれてたって、あれは相手の人の冗談で──」

「冗談なわけあるかよ」

真剣な目で見つめられて、思わず息を呑む。

ただでさえ近かったのに、五十嵐くんはさらにもう一歩距離を詰めてきた。
逃げ場を塞ぐように、建物の壁際まで追い込まれる。

「俺はずっと見てきた。だから知ってる。成田が誰に、どんな目で見られてるか。……なのに成田は何もわかってない」

五十嵐くんの指先が私の口元にかかる。
無理やり顔を上げさせられ、至近距離で視線が絡んだ。


「成田、俺と付き合おう。それで、俺のものになればいいよ」

「……五十嵐くん、あの」

「俺のものになれば誰にも手出しをさせないし、どんなことからも守ってやれる」

「…………」

「余計な心配がなくなれば、成田は仕事に集中できる。それが成田の幸せだろ? そうあるべきだ」
< 21 / 214 >

この作品をシェア

pagetop