仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
五十嵐くんの言うとおり、実家にいる母から「いい人はいないのか」とか「紹介しようか」とか、毎週のように遠回しに急かされているのだけれど。
「今はまだ、ほんとに考えてない……かな。まあ、ゆくゆくは……って思わないこともないけど」
「だったら早いほうがいいよ。成田、よく住人からも口説かれてたりするだろ。この前の男は妻子持ちだったし。ああいうクソみたいな奴に捕まる前に手を打っとかないと」
「ちょ……、ちょっと待って。いきなりどうしたのっ? 口説かれてたって、あれは相手の人の冗談で──」
「冗談なわけあるかよ」
真剣な目で見つめられて、思わず息を呑む。
ただでさえ近かったのに、五十嵐くんはさらにもう一歩距離を詰めてきた。
逃げ場を塞ぐように、建物の壁際まで追い込まれる。
「俺はずっと見てきた。だから知ってる。成田が誰に、どんな目で見られてるか。……なのに成田は何もわかってない」
五十嵐くんの指先が私の口元にかかる。
無理やり顔を上げさせられ、至近距離で視線が絡んだ。
「成田、俺と付き合おう。それで、俺のものになればいいよ」
「……五十嵐くん、あの」
「俺のものになれば誰にも手出しをさせないし、どんなことからも守ってやれる」
「…………」
「余計な心配がなくなれば、成田は仕事に集中できる。それが成田の幸せだろ? そうあるべきだ」