仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

俺しかいないよ、と五十嵐くんが続ける。

私は言葉を失ったまま、その目をただ見つめ返すことしかできなかった。

今の言葉は……つまり、私を好きでいてくれている、ということだろうか。


「なあ、お願いだよ。成田のことは自分の手で幸せにしてやりたい」

「……あり、がとう。ちょっと、ゆっくり考えさせて……」

それは、いつも私を気遣ってくれる五十嵐くんの想いを跳ね除けたくないのが半分。
もう半分は、今の状況からひとまず逃れたいという、無責任で最低な理由から出たセリフだった。

やがて五十嵐くんの手が離れていく。

「わかった。返事、待ってるから。また明日」

最後に向けられた笑顔に、胸がずきりと痛んだ。

うまく、言葉を返せなかった。
今日は異動を言い渡されたのもあって、余裕がなかった、かも。

そう反省した矢先、スマホが鳴った。つい先ほど思い出したばかりの母からだ。


「もしもし? どうしたのお母さん?」

『いやね、別に大した用事じゃないんだけど、今日はほら、お父さんが地主の総会に出向いてるからさあ、暇だしあんたの声でも聞こうかなと思って』

「ふふっ、なにその理由」

『ねえ、いい人いないの? お母さん、早く孫の顔見たいなあ。お父さんとも毎日話してるんよ』

「も~またそれ? 気持ちはわかるけど、すぐには難しいよ、仕事も忙しいし……。でも、まあ、いつかいい報告ができるように頑張るね……!」
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