仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

建物は、世界的建築家と宮廷付きデザイナーの共同設計らしい。

思えばたしかに。初めてその外観を拝んだとき、住宅というより美術館みたいだなと思った記憶がある。

二十四時間体制のコンシェルジュサービスはもちろんのこと。
三ツ星シェフが常駐するダイニングやリゾート級のプライベートプール、医師と看護師によるメディカルサポート施設などがあり、屋上にはヘリポートまで備えられている。

さらに各住戸へは専用エレベーターでアクセスできるのだとか……。


資料に目を通していると、手のひらがじんわりと汗ばんできた。

クラルテが完成したのは、たしか七年前──私が大学二年のとき。

オープンな内覧会のようなものは一切行われず、ごく一部のVIPに向けて完全紹介制で販売されたと聞いた。

分譲価格は一戸八十億から、上は三百億超え。
一般的な社会的成功者と呼ばれる層でさえ容易には手が届かないように思う。

──“異動していただく予定のマンションは、こことは規模も客層も大きく違います。
相手にするのは財界人や芸能人……いずれも扱い方を決して間違えられない人間ばかり”

夜見社長の言葉がさらなる重みを帯びてのしかかってくる。
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