仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「今日、十三時から例の視察が入ってたじゃないですか」
「まさかその同行で?」
笹井さんがコクコクと勢いよくうなずく。
「今までずっと代理の人だったよね?」
「はい。それで驚いてたら、夜見社長と一瞬目が合っちゃって──」
笹井さんがさらに声のトーンを落とすので、私もつられるように息を詰めた。
夜見社長。画面越しに拝むだけの、決して触れられない存在。……だからだろうか、胸の奥で好奇心がうず巻いて、その真ん中へつい引き寄せられていってしまうのは。
……と、そのとき。
突然、更衣室の扉がノックもなく開け放たれた。
「っ、成田さん! あの、た、大変です!」
私たちが振り向くよりも先に響いたのは、そんな叫び声。
見ると、さっき業務を交代したばかりの同僚が息を切らしながら立っていた。
少し青ざめているような、だけどどこか熱を帯びてもいるような、どちらともとれないその表情に、いったい何事かと思えば。
「たった今、夜見社長がお見えになって! それで成田さんを呼んでほしいと……!」