仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
おかげで、返事をするまで妙な間ができてしまう。
「──、はい、ちょうどお昼休憩に入る時間ですので空いております」
「それはよかった。というのも、クラルテへ異動していただくにあたって、事前に打ち合わせをさせていただければと考えておりましてね。本日、ランチミーティングという形でどうでしょう?」
「お打ち合わせ……ですね。承知いたしました。ぜひよろしくお願いいたします」
「では、三十分後に俺の秘書をそちらに向かわせますので」
そうして、通話はあっけなく切れた。
受話器を置いたあとも、しばらく夜見社長の声が耳の奥に余韻のように残っていた。
……、……び、びっくりしたあ……!
一瞬、まさか夜見社長とふたりで打ち合わせをするのかと勘違いしてしまった。
彼とふたりきりで食事……なんて、あるわけがない光景を思い描いてしまった自分が恥ずかしい。
──“三十分後に俺の秘書をそちらに向かわせますので”。
俺の秘書。
……そうだよね、彼が自ら足を運ぶわけがない。
先日、私に異動の話を伝えに来たあのときが異例だったのだ。