仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
喉奥で震えていた言葉を丁寧になだめて、ぎゅう、と押し出した。

一秒、二秒、三秒。
五十嵐くんからの返事はない。聞く勇気も、ない。

相手の目を見ることすら今はできなかった。


「……もう時間だから行くね」

結局、時間を言いわけに逃げてしまう。


───傷つけた。
ううん、付き合ってから傷つけるよりずっといいはずだ。

相手の望むかたちに自分を変えること。
私には息をするようにできてしまう。

仕事ではそれでもいい。むしろ求められていることだと思う。

けれど、愛や恋になると話は変わってくる。

あなたの望む私、などという不確かなかたちの中へ大切な人を引き込むわけにはいかないから。

寄り添うことと、向き合うことは違う。
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