仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
雨に濡れた夜のふたり
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『E‐3801夜見統悟様、秘書の方より24時20分ごろ帰宅予定とのご連絡がありました』

インカム越しに落ちついた声が届く。
承知しました、と短く応じて、私はモニターへ視線を戻した。

クラルテに異動してちょうど一週間。

住人としての彼の名前を聞いたのは、思えば今日が初めてだった。

入居者情報を確認した際に、イーストタワー38階の登録者が彼であることは把握していたけれど、この一週間、出入りした履歴はなかった。

画面を遡ると、最後に帰宅したのは十日前となっている。

あまり帰ってこない人だと、周りからもよく話を聞いていた。

というか嫌でも耳に入ってくるのだ。

クラルテスタッフの話題の六割を、夜見社長が占めているようなイメージ。決して、大げさじゃなく。

そのせいで、ただ一度顔を合わせただけの彼のことを私はそれなりに知ったような気になってしまっている。

もちろん、すべてを鵜呑みにするわけじゃないけれど。

ちなみに、帰って来ないのは当然仕事が忙しいから。
加えて、夜は恋人の部屋に通い詰めているからでは?……なんて噂もあるそう。
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