仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「かしこまりました。今週土曜の午後でご案内が可能なお部屋ですと、20階南側のVIPルーム、あるいは、お食事を中心にお楽しみになられるのでしたらプライベートダイニングも現在空きがございます」
「そうですね……。では、ダイニングのほうをお願いしても?」
承りました、と頷き、手元の端末で操作を進める。
キーボードを叩く指先がかすかに震えている。
今週土曜の午後と聞いて、スカイラウンジの予約が被りでもしたら……などと想像し、焦ってしまった。
ただ、それが杞憂に終わっても、なぜか震えがおさまらない。
これ以上視線を合わせていれば意識のすべてが彼に持っていかれそうだ。
過去に国家要人を相手に応対したときも、ここまではならなかった。
夜見社長の瞳はやっぱり私をおかしくさせる。
プライベートダイニングの枠を押さえ、それから、時間や人数、料理の内容などをひとつひとつ確認していく。
彼は特に冷たくも温かくもない声で、淡々とそれらに応えていた。
感情が読めないことでさらに緊張が募る。
彼にどう見られているかなど、今は考えるべきではないのに。
「それでは、当日は万全の体制でお迎えできるよう手配いたします」
必要な確認を終えて、頭を下げる。
なんとか、やりきった……。
彼が背を向ける気配がして、詰めていた息をゆっくり吐き出そうとした。
────刹那。
「……ああ。そういえば、成田さん」