仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「先ほど地下に入った際、俺の前にいた車を警備員が別の駐車場へ案内していたところだったんですよ。聞けばその方、成田さんを──“彼女を迎えに来た”とおっしゃっていたようで」
「……え、っと」
「五十嵐さん、でしたかね。うちの社員証を提示されたとのことで、警備員も今回は通したようですが」
「……、……」
思考が追いつかず、相手を見つめ返すことしかできない。
話を理解しようと思うのに、冷たく鳴り響く鼓動が邪魔をする。
五十嵐くんが……クラルテへ?
私を、迎えに……?
記憶をいくら辿っても、そんな約束をした覚えはない。
それに、“彼女”って……。
私が戸惑っているあいだに、夜見社長は今度こそ背を向けて去っていってしまう。
「──あのっ……」
思わず引き止めてしまったけれど、私は、何を言おうとしているんだろう。何を伝えるべきなんだろう。
夜見社長はべつに、五十嵐くんと私が恋人であることを咎めたわけじゃない。
無論、そのような関係ではないのだけど。
私たちの関係など彼にとってはどうでもよく、単に、部外者を立ち入れるなという忠告だったのだ。
そう、彼にとっては私が五十嵐くんの恋人であろうがなかろうが、どうでもいいこと……──。
「………申し訳、ございませんでした」
さんざん迷った末にようやく出てきたのは、そんな短いひとことだけだった。
