仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
いつもなら冷静でいられるはずが、どうしてか今日はだめみたい。
五十嵐くんの言う通り、この一週間、仕事に熱を入れすぎていたのかも。
笑って流さなきゃと思うのに、どうしても顔がこわばってしまう。
「ごめん……、私そろそろ仕事に戻らなきゃ」
結局、逃げるように目を逸らした。
あれから、五十嵐くんをろくに見送りもせずデスクに戻ってきてしまった。
……さすがに感じ悪かったよね。
木曜日のことを考えて気が重くなる。
そもそも、一度交際を断った相手。
ふたりで会うのは違う気がする。
まあ、五十嵐くんだって本気じゃなかっただろうし。
今まで通り同期として、友達として、みたいな感じで誘ってくれたんだろうけど……。
ふと、夜見社長とのやり取りが頭をよぎる。
──“聞けばその方、成田さんを──『彼女を迎えに来た』とおっしゃっていたようで ”。
あのときは警備員さんが聞き間違えただけだろうとしか思わなかったけれど、もしかしたら中に通してもらうために五十嵐くんがわざとそう言ったのかも……。
そんな考えが頭をよぎる。
いや、そんなはずはない……と、思いたい。
そう結論付けたあとも、妙な違和感はなかなか消えてくれず。
そのまま時間が過ぎて────気づいたときには、午前六時を回っていた。
慣れない時間帯の仕事だったせいか、疲れがじわじわと押し寄せてきていた。
頭の中は霧がかかったように頼りない。
だめ。あと一時間で退勤だから集中しないと。
自分に言い聞かせながら、おもむろに視線をあげた───その直後。
ふと視界に映った人影に、心臓がばく、と跳ねた。
────夜見社長だ。