仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
対する夜見社長はにっこりと微笑み、「ええ、本当に」とうなずいた。
そのやわらかい表情に、勝手ながら安堵を覚える。
私はなるべく空気に徹して身を引き、鈴原様のみに視線を向けた。
「ところで鈴原様。先程ハンカチを落とされたようでしたのでお届けに参りました」
「えっ、気づかなかった。ありがとう。ああそれと、この前はジェット機すぐ手配してくれて助かったよ〜。クラルテ新人とは思えないね本当に!」
慌てて首を横に振る。
きっと夜見社長の前だから過剰に褒めてくれているのだ。そんなの、逆にいたまれない。
「お話のお邪魔をしてしまい申し訳ございません。それでは失礼いたします」
デスクに戻ると手のひらにうっすらと汗をかいていた。
また……だ。
これまで息をするようにできていたことが、夜見社長が近くにいるだけでぎこちなくなる。
ひたすら呼吸を奪われる続けるような感覚だ。
いまだに視界がくらくらするのは、疲れのせいだけじゃない。
今回は一度も目を合わせなかったのにこのザマ……。
デスクに手をついてうなだれる。
夜見社長の声がしたのは、その矢先のことだった。
「成田さん。少しよろしいでしょうか」