仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~


──夜見 統悟

【都市開発をも手掛ける大手不動産会社のトップの座に、若くして君臨】

【大財閥の御曹司でありながら、先代の築いた地位に甘えるだけの男ではなかった──】


いつか見た雑誌の一文を思い出す。

あまりに出来すぎているように感じるけれど、彼の凄まじい実績を見れば否応なく納得させられてしまう。

……ただ、その“やり方”があまりに冷酷だと、界隈ではいつも囁かれていた。


たとえば東京郊外の、ある地域の話。

再開発の計画をめぐって住民が大規模な反対運動を起こしてたのが、ある夜を境にぴたりと止んだのだとか。

噂では、夜見社長が非道な圧力をかけ、住人を脅すかたちで黙らせたと言われている。


商店街の話も有名だ。

長年そこに店を構えてきた店主たちが頑なに立ち退きを拒んでいたにもかかわらず、なぜかすべての買収がわずか一週間で完了したらしく。

じつは夜見社長が行政と裏で手を組み、あらかじめ水面下で手続きを進めていたのだ……と。

これはたしか、笹井さんが教えてくれた。


社内での黒い噂も絶えない。

盾突いた上級役員の地位をその場で剥奪したり、特に問題を起こしたわけでもない社員に左遷を言い渡したり。

他にも不自然に会社を辞めていった人々が山のようにいると聞く。

『夜見社長は気に入らない人間を徹底的に排除している』

『彼に逆らうな。次に席を失うのは自分だと思え』

教訓じみた言葉は、子会社に勤める私たちの耳にまで度々届いていた。


もちろん、どれも証拠はない。

表向きの彼はあくまで都市の未来を創造する有能な経営者であり、完璧な紳士だ。
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