仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「……五十嵐くん、なんでここに」
「なんでって。木曜18時に迎えに行くって言っただろうが。一緒に飲みに行くって約束しただろ」
「っ、その約束は──」
「まさか、なかったことに、とか言わねえよな?」
苛立ちを隠そうともしない低い声だった。
鋭い目で睨みつけられて、全身がじわりと汗ばむ。
答えられないでいると、五十嵐くんは痺れを切らしたように車から降りてきた。
身を引こうとしたけれど、もう遅い。
乱暴に腕を引かれたはずみで、傘が手を離れて地面へと落っこちる。
「なあ、早く車に乗れよ」
「やっ……」
「なんで? なんで抵抗するの、成田」
「ご、めんなさい、実はまだ体調が悪くて……今日はとても飲みに行けるような状態じゃ、なくて」
「んなの知ったことじゃねえよ……乗れっつってんだろ!!」
突然激しい怒声を浴びせられ、びくっと体が震えた。
鼓動が異常なほど早鐘を打っている。息がうまくできない。
明るくて優しい五十嵐くんの面影はもうどこにもない。
……この人は、いったい誰……?