仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
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あれから数分後、私はどういうわけかクラルテの建物内に逆戻りしていた。

夜見社長の車に乗せられてからの記憶は曖昧だ。
熱に浮かされながらぼうっと窓の外を眺めているうちに、車は地下駐車場のセキュリティゲートを通過していた。

視界の端でセンサーの赤い光を捉えた瞬間、はっと正気に戻る。

「あ、あの、すみません、私っ……」

車が止まり、勢に任せて声を掛ければ、案の定言葉に詰まってしまった。

……ええと、……そうだ。
五十嵐くんに殴られそうになったところを、ちょうど通り掛かった彼が助けてくれたのだ。

やさしく私の手を引いて、それから、自分の上着まで掛けてくれて……。

──『あなたが手を上げようとしたこの女性が、その“夜見統悟”のものだということまでは、ご存知ありませんでしたか?』

ついさっきの光景が、ぼやけた意識の中に浮かび上がる。

一拍遅れて、心臓が大きく跳ねた。
首筋から頬にかけて、火照りがじわじわと広がっていく。

「さ、先ほどは助けていただいて、本当にありがとうございました」

「べつに、礼を言われるようなことは何もしていませんよ。敷地の近くで従業員に騒ぎを起こされては、クラルテの品位を貶めかねない。そう判断して声を掛けただけですので」

「……はい。お騒がせして申し訳ございませんでした」
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