仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
そんな矢先のこと。

「っく、はは……っ」

沈黙の中で、ふとそんな声が弾けて。

顔を上げた瞬間、驚きのあまり固まってしまった。

……だって、夜見社長が、肩を揺らしながら笑っている。

…………え?

予想もしなかった光景に、私は瞬きを繰り返す。

「あ、あの……」

戸惑いながら声をかけると、彼はようやく笑いを収め、指先で目元を押さえた。

「すみません、まさかここまで素直だとは……。本当に可愛い方ですね」

「な、にを急に、おっしゃるんですか……」

語尾が情けなくしぼんていく。

また、からかわれた……。

あからさまに動揺してしまって恥ずかしいのに。逃げたくてたまらないのに。

目の前の彼が、なぜか、私の知る中で一番楽しそうな顔をしているせいで目が離せない。

「正直に話してくださりありがとうごさいます。つまり完全に割り切った、ビジネスライクな関係をご所望ということですね」

「えっ……まあ、そういうことになります、かね……?」

「わかりました。あなたがそれを望むなら、私はただの契約相手として徹するようにします」
< 81 / 209 >

この作品をシェア

pagetop