仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
そう言ってにこりと微笑む夜見社長は、これまで画面越しに眺めてきた彼と同じ表情をしていた。
違和感を覚えるほど完璧で隙のない笑顔。
目の前にいるはずなのに、急に、どこか遠い人のように思えてくる。
少し遅れて、胸の内側がざわりと波立った。
心の奥底で、なにか、寂しさに似た冷たい熱がぐるぐると渦を巻く。
なにこれ……。
自分の気持ちを正直に、余すところなく伝え尽くしたはずなのに、まだ中に何かが残っている気がする。
────今、彼に話したことに嘘はない。
もう恋はしたくない私にとって、お互いの利益だけで成り立つ関係が都合がよかった。
だから彼との結婚に頷いた。
間違っていないはず……だけど。
理屈を積み上げるたびに自分の中で違和感が大きくなる。
お互いの利益だけで成り立つ関係が都合がいいのは事実だけど、夫婦になるのに完全なビジネス関係というのも、少しさみしい気がする。
……なんて、思うのはきっと、一週間前に、この人の優しさを知ってしまったからだと思う。
五十嵐くんから助けてくれたときの、触れた手の温かさは今でも鮮明に覚えている。思い出すと、少し苦しいくらいに。
「急に黙って、どうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもありません」
とはいえ、やはりまだ冷たい印象のほうが大きい。
普段のぞっとするほど静かな瞳で見つめられるたびに、まるで心臓の鼓動まで彼に支配されているみたいで落ち着かく暇がない。