最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~
 そして、とうとうやって来た文化祭。

 皆はお祭りモードだ。

 しかも、たくさんの人で普段の校舎が想像できないほど人で溢れている。


「まず、どこに行こうかな。」


 あてもなく賑わう校舎を歩く。

 あ、そういえば英が写真撮ろう、って言っていたような気がする。

 行ってみよう。


「お邪魔します…。」


 英のクラスに行くと、たくさんの風船や月やハートなどのたくさんのオブジェがある。


「美夜ちゃんっ。来てくれたの?」


 留守番をしている英。

 当然のごとくいろんな人に囲まれて可愛がれているのに、こちらに向かってくる英。

 昔からの仕草に胸が痛む。


『何年好きでずっと想っていると思ってんの。』


 もしかしたら、英はずっとだったの?

 そう考えている私をよそに英はニコニコしている。


「僕、来てくれないかと思った。」


 少しだけ、英の笑顔に影が差す。


「来るよ。だって、英との約束だもん。」


 皆で文化祭の話をしながら帰った放課後、


『僕はフォットスタジオだよ!美夜ちゃん絶対来てね!一緒に写真撮ろうね!』

『うん。』


 そう約束したから。

 約束したのなら守らなきゃ。


「……美夜ちゃんのそういうところ、ほんと好きだなぁ。」


 英のその呟きは聞こえなかった。

 しかし、聞こえたのは


「ねえ、あの人じゃない?蘭先輩を振っておいて霞先輩に乗り換えた人。ついでに、雪斗先輩にも庇われていたし。」

「ほんと。佐野さんが可哀想。」

「悪女じゃん。よくそんなんで学校来れるよね。」

「私だったら無理。」


 悪女なのは認めるけど…。

 実際、殺し屋だったわけだし。

 しかし、恋愛云々は私のせいにしないで。

 なんて、言えるわけない。

 なぜなら、相手は英のファンクラブの方々だからだ。

 ここで、英と仲のいい私が相手を刺激したりしたらきっと英の株が下がる。

 それだけは避けなきゃ。


「ねぇ、英。写真撮ろ?」


 気にせず気丈に英に話しかける。

 英は「そうだねっ。撮ろ~撮ろ~。」なんて言って笑顔で返してくれると思った。

 しかし、英の顔は笑顔ではなかった。


「ねぇ、君たちさ。」


 笑顔なのに、いつものホワホワした笑顔じゃなかった。

 “笑顔でいないと平常心を保てない”笑顔をしていた。


「僕の大切な人が傷ついているんだけど?」

「え?英、くん。」

「ちょ、ノリじゃん。英くんらしくないよ!」


 英の怒っているような言動に女の子は戸惑っている。


「僕らしくない?君たちは一体、僕の何を知っているの?」


 英が目を細める。

 女の子達は何かを感じ取ったのか、顔を真っ青にして逃げて行く。


「え、英?」

「ん?どうしたの、美夜ちゃん?」


 振り返る英。

 その笑顔はいつものフワフワした笑顔と穏やかな声だ。


「私のことはいいんだよ?」


 私のせいで英の株を落として、英を孤立させたくない。


「……僕が嫌なんだよ。美夜ちゃんは何も悪くないのに…。」


 目を潤ませる英。


「泣かないで、英。ほら、写真。撮るんでしょ?」

「うんっ。」


 全部のオブジェで私と英のツーショットを撮る。

 月のオブジェでツーショットを撮る。


「ねぇ、美夜ちゃん。もっとこっちに寄って?」

「うん。」


 月のオブジェクトは三日月なので近くなってしまう。

 英との肩が触れ合う。


「じゃあ、撮るね。」


 シャッターボタンを押す。

 カメラロールを押すと、今まで撮った写真が画面に映し出される。

 私は無表情で英はフワフワした笑顔。

 ……こんなにも正反対なのに、英はどこを好きになったんだろう?


「……ねぇ、美夜ちゃんさ。」

「うん?」

「もっと、自分を大切にしてよ。」

「へ?」


 英が私の肩に頭を預ける。


「美夜ちゃんはいつだって自分を後回しにする…。」


 そう言った英の表情が見えない。

 思い返せば、いつだって優先はボスと任務で、皆と出会ってからいつしか皆が優先事項になっていった。

 私は、なんでもこなせるから。

 いや、こなさないと生き残れなかったから。


「でも、そうしないと…。」

「美夜ちゃんがそうやって自分のことを後回しにするの、僕はずっと見ていて辛かった。」

「……英。」


 しばらくの間、私はその場から動けなかった。

 私は守ることはできても、安心させることはできないみたいだ。

 まだまだ、自分の足りないところを見透かされたような気がした。
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