フィオナの運命
心に秘めた想い
「ルナ、元気でね。しばらく留守にするけど、必ず戻って来るから。メル、みんなをよろしくね」

一旦牧場に帰ると、フィオナは身体をしっかり休めてから夜明け前の牧場に出た。

干し草と水を入れ替えて、ルナ達に話しかける。

「私が留守の間は、ユーリさんが様子を見に来てくれるから大丈夫よ。みんな、元気で」

夜が明け始めた頃、カイルに乗ったルシアスが静かに姿を現した。

ユーリが王宮でルシアスに扮している以上、国王の護衛の兵士はつけることができず、二人だけでの旅路となる。

「フィオナ、支度はできたか?」
「はい、ルシアス様」

と言っても、水と食料と毛布1枚をまとめただけだが。

ルシアスはカイルに、小さなテントやランプなども載せていた。

更には、腰に剣を携えている。
それを見てフィオナはハッとした。

(ルシアス様は、この剣を抜く度に寿命が縮んでしまうというのに……)

剣を持たないでほしいが、これから向かう聖なる山は国境をまたぐひと気のない場所。

敵の兵士や、オオカミにも襲われる危険がある。

(その時に武器がないのは心許ない。そうだわ! ルシアス様に剣を引き抜かせなければいいのよ。それに万が一ルシアス様の身になにかが起こったとしても、私が力を使えばいい)

そう考えていると、カイルから降りたルシアスが怪訝そうにフィオナの顔を覗き込んだ。

「どうかしたか? フィオナ」
「いいえ、なにも。今、馬を引いてまいります」

フィオナが厩舎に入り、アーサーの手綱に手をかけると、カイルもそっと入って来てルナに近づいた。

カイルとルナは、互いに顔をすり寄せる。
それを見て、ルシアスもルナに声をかけた。

「ルナ、心配するな。カイルは必ず俺が守ってみせる。もちろん、フィオナのことも」
「ルシアス様……」

私こそルシアス様を必ずお守りする、とフィオナは心の中で誓う。

「よし。行くぞ、フィオナ」
「はい」

二人はしっかと頷き合い、それぞれカイルとアーサーに跨って駆け出した。
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