フィオナの運命
「バギラ様、王家にかけられた呪いを解く方法をご存じですか?」

バギラは静かに首を振る。

「残念ながら、私にはなにも。どんなに水晶に語りかけても、手掛かりすら掴めなかった」
「そうですか……」

落胆したものの、フィオナはすぐにまた顔を上げた。

「バギラ様。その聖なる山に行けば、なにか分かるかもしれません。わたくし、行ってみます」
「なんと、そなた一人でか? 無茶な。あの山に行くには、馬で何日もかかる。その上、近づくだけで迷路に入り込んだようにさまよい続けると聞いた。そなただけでは危険すぎる」
「ですが、それしか方法はないのです。それにこの水晶は、その聖なる山に眠っていたものなのですよね? もしかしたら、この水晶が導いてくれるかもしれません」
「それはそうだが……。とにかくそなた一人では危なすぎる」

その時、またしてもユーリが声を張る。

「俺ってこう見えて、ルシアス様に負けず劣らずのイケメンだって、侍女の間でもてはやされてるんですよねー。背格好も似てるし、髪の色が違うだけ。ヅラさえあればルシアス様にそっくりで、影武者にはうってつけ。それに幼い頃から一緒にいたおかげで、ルシアス様のお考えは手に取るように分かるし。しばらく留守にされても、俺が執務を代われば、なんとかなっちゃうと思うんですよねえ」

ジロリとルシアスはユーリを横目で睨んだ。

「ユーリ、なにが言いたい?」
「フィオナを一人で行かせるなんて、俺の知ってるルシアス様なら絶対にさせませんよねってことです」
「もちろん、そんなことはさせはしない。フィオナを止めてみせる」
「無理ですよ」
「なに!?」

するとバギラも頷いた。

「国王陛下。我ら神の遣いの使命感は、そんなにたやすいものではありません。この水晶を授けられたフィオナも、神に認められ、大きな力を秘めているのです。きっと神のご加護のもと、呪いを解く手掛かりへと導かれるでしょう。それに陛下、あなた様に残された時間は短い。フィオナが呪いを解く術を知っても、ここへ戻って来るのに時間を要せば、その前に陛下の命の灯火は消えてしまいます。フィオナと一緒に行かれた方がよろしいかと」

視線を落として考え込むルシアスに、ユーリが真剣に向き直る。

「一番大切な人を守れなくて、国を守れるとお考えですか? 国王陛下」

顔を上げたルシアスに、ユーリはしっかりと頷いてみせた。

「行ってください、ルシアス様。あなたにはこの先もずっとずっと、この国を守っていただかなければ。ですからどうか、諦めないで立ち向かってください。この国のみんなの為に」

じっとユーリと視線を合わせてから、ルシアスはゆっくりと頷いた。

「分かった。ユーリ、留守を頼む」

ユーリはスッと姿勢を正して声を張る。

「御意」

そして想いを込めるように、深々とルシアスに頭を下げた。
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