フィオナの運命
「今夜も綺麗な月ですね」
「ああ、そうだな」

二人で肩を並べて、静かに夜空を見上げる。
その胸に、様々な想いが込み上げてきた。

今、二人で一緒にいられることの奇跡。
これからも共に生きていけることへの感謝。
家族に分け与えてもらった命の尊さ。
そして必ず互いを幸せにしてみせるという決意。

「フィオナ」

やがてルシアスは優しく、愛する人の名を呼んだ。

「はい」

フィオナも真っ直ぐにルシアスを見つめ返す。

「王家に代々受け継がれてきた『神の恵みの結晶』を、今そなたに贈る。フィオナ、左手を」

ルシアスはフィオナの左手をすくい上げると、細く長いその薬指にゆっくりと指輪をはめた。

「まあ、なんて美しいの……」

まばゆく輝く透明な輝きに、フィオナはうっとりと魅入る。

だが、王家の歴史と共にとてつもない重みが伝わってきて、フィオナは戸惑いながらルシアスを見上げた。

「ルシアス様。わたくしのような者が、こんなにも大切な指輪を受け取る訳には……」
「フィオナ、そなたは俺の目が節穴だと言いたいのか? 俺がそなたを選んだんだ。生涯でたった一人の、全てを捧げる相手に」
「ルシアス様……」

フィオナの瞳から涙がこぼれ落ちる。
ルシアスは優しくフィオナに微笑んで、そっとその涙を指先で拭った。

「王家の力を宿したこの指輪がそなたをいつも守るだろう。そして俺も、命をかけてそなたを守り抜くとこの指輪に誓う」
「ルシアス様……。わたくしは、あなたになにを差し上げればいいのでしょう? お渡しできる宝石も金貨も、なにも持ち合わせていないのです」
「なにも望まない。ただそなたがそばにいてくれるだけでいい。フィオナ、どんな時も俺と一緒に生きてくれるか?」
「はい。わたくしの命はあなたと共にあります。どうかおそばにいさせてください、ルシアス様」
「ありがとう、フィオナ」

ルシアスは大きな右手でフィオナの左頬を包むと、そっと上を向かせる。
潤んだ瞳で見つめられ、ルシアスの胸は切なく痛んだ。

「フィオナ、心から愛している」
「ルシアス様、わたくしもあなたを愛しています」

ルシアスの胸に幸せが広がる。
その想いを伝えるように、ルシアスはフィオナを抱き寄せて口づけた。
< 73 / 82 >

この作品をシェア

pagetop