雨の日が苦手だった、私たちは
「そうですね……あまり今日と変わらない気がします。よく周りを見て、てきぱき動き回っていて。飲み会でも、本人はお酒を全く飲まずに場を温めていました」
「へぇ、そうなんだ。やっぱり高瀬くんは高瀬くんなんだねぇ」
なるほど、と三人が納得するように頷いている。
もしかしたら、萌衣の知らない高瀬の顔を、三人はたくさん知っているのかもしれない。そう思った萌衣は、気になっていた『あれ』を切り出した。
「あのー……高瀬さんって、『鬼』なんでしょうか?」
そう言った瞬間、安藤と石原がブッと吹き出した。
それを見た柳が「も〜二人とも、汚いですよ〜」と呆れたように言っている。
萌衣はすかさず、多めに取っておいた紙ナプキンを二人に差し出した。
安藤は「あははっ、直球だねぇ」と言って、目尻に浮かぶ涙を指で拭った。
「あ、朝比奈さん、ありがとう。気が利くね」
「いえ、とんでもないです」
「それで……高瀬くんが鬼かどうかって話なんだけど」
仕切り直すように、安藤は真面目な顔を作る。
「彼は自分にも厳しいけど、他人にも厳しいのよ。事務処理能力が高いから、小さなミスも見逃さない。ミスした相手にははっきり指摘するし、詰められたと勘違いする人もいる」
「なるほど……」
うんうん、と萌衣は頷く。予想通りの内容だと思った。でも、それが噂の『鬼』とはまだ結びつかない。
「……まぁ、前に一緒にやってた営業事務の子は『私がいない方が、高瀬さんの仕事が捗ると思います』なんて言って、いなくなったわよね。まったく、そんなこと言ってないで、さっさと仕事しろーって感じだけど」
萌衣が乾いた笑いを浮かべると、柳も何かを思い出したように「そういえば」と呟いた。
「その前にいた子は、高瀬さんに恋して仕事に手がつかなくなって。アピールが激しいからって、外された子もいましたよね」
「えぇ、そんな方もいたんですか?」
「あはは、そんな子もいたね〜。まぁ、結局彼女も退職しちゃったけど。高瀬くんみたいにモテる男は大変よね〜。で、石原くんはさ、どう思ってるの?」