雨の日が苦手だった、私たちは
突然話をふられた石原は、咀嚼していた生姜焼きを急いで飲み込んだ。「そうですね、えーと……」と言葉を探しながら、さらにお茶を流し込む。
石原から見た高瀬は、また違ったものだった。
「俺は営業二年目ですけど、やっぱり憧れますね〜。高瀬さんは今の部署に来てすぐトップセールスになって、もう五年目ですけど、ずっとその座を守り続けてるんですよ。まぁ、それをよく思わない人も少なくないみたいですけど」
なるほどと萌衣は頷く。それだけ仕事ができると、ああやって部署内でも噂の的になってしまうのかもしれない。
「高瀬さんは数字重視で合理主義で。中身は、一定の体温って感じがします」
一定の体温、という言葉にぴくりと反応してしまう。先ほど会議室で見た、熱くもなく、冷たくもない、あの視線のことだ。
それを聞いた安藤は、えぇ?と首を傾げた。
「一定の体温ってどういうこと? 感情的にならないとか、そういう話?」
「うーん、そうですね……なんて言うんですかね、その場にいるだけでみんなの士気が上がる、太陽みたいな人なんですけど……その太陽は、ずっと同じ温度なんですよ。感情的にならないし、ぶれない。俺はそれがすごいなって思います」
それを聞いて、安藤も柳も「なるほどね〜確かにそうかも」と頷いた。みんな、高瀬のことをよく見ている。
感心していたのも束の間、石原は「だから、」とまとめに入った。
「だから、高瀬さんは恐れられてるんですよね〜」
「恐れられてる、ですか?」
「そうなんです。失敗したからといって怒鳴らないし、叱責もしない。淡々と事実を並べる。こちらは言い訳の余地もない。そういう意味では……相手の感情に寄り添うところがないのが、怖がられる原因かもしれないんですけど」
「だから、『鬼』って言われてるんですね」
石原の分析に、萌衣は「なるほど」と大きく頷く。石原はというと「そういう部分も含めて、俺は憧れてますけどね〜!」と明るく言っていた。
もちろん、萌衣は三人が言うことを全て鵜呑みにするつもりはない。でも、三人の話を聞いて、とても参考になった。
朝聞いた噂話にも、納得できる。