雨の日が苦手だった、私たちは
「仕事休んだ時、高瀬くんは心配してた?」
ふと高瀬の名前が出てきて、ぴくりと体が反応する。あの時の高瀬とのやり取りを思い出した。
「はい……高瀬さんから『大丈夫か』って連絡をいただきましたし、復帰してからもずっと気を遣っていただいて……」
「えぇ、高瀬くん、どんな連絡をくれたの?」
「えっと……」
どんな内容だったか、社用スマホを取り出して見返す。
『了解、ちゃんと休んで。こっちのことは何も気にしなくて良いから。(返事は不要)』
『ご飯、ちゃんと食べられてるか? 何か必要なものがあれば言ってくれ』
メッセージを読んで、胸の奥がじんわり熱くなる。
体調を崩している時、高瀬からの気遣いが本当に嬉しかった。
妹の杏奈と電話をした後で、高瀬のことを「好き」だと自覚してしまったことまで思い出してしまった。だんだんと胸が苦しくなってくる。
安藤にせっつかれて、社用スマホを三人に見せた。
すると、安藤はにまりと笑顔を浮かべ、石原と柳は驚いたように顔を見合わせていた。
「これ、本当にあの高瀬くん!? もう、彼氏みたいじゃない。え、朝比奈ちゃん、高瀬くんと付き合ってたの?」
「いえ、付き合っていないですし、これはプライベートの連絡じゃなくて社用スマホですし……」
「え〜〜でも、こんな高瀬くん、初めて見た! だって、『必要なものがあれば言ってくれ』って、もし朝比奈ちゃんがお願いしたら家まで持ってきてくれたってことでしょう?」
「う、多分、そうかもしれません……」
きゃっきゃと騒ぐ安藤に対して、柳は冷静に「はしゃぎ過ぎです」と突っ込んでいた。
「でも、実際、高瀬くんは朝比奈ちゃんと一緒に仕事するようになってから、課長昇進が濃厚になってるよねぇ! やっぱり、二人は良いペアなんだと思う」
「え、そうなんですか?」
「そうそう。だって、高瀬くんってこんなに実績を残してるのに、いまだに昇進していないでしょう? 昇進していない理由って、なんだと思う?」