雨の日が苦手だった、私たちは
side高瀬陽
窓硝子に映る灯りも、だんだんと少なくなってきた。近隣のオフィスビルでも、仕事を終えて帰路につく人が多いのだろう。
そんな中、国内営業部のフロアは煌々と灯りがついていた。
「高瀬さん、お疲れ様です。俺は先に上がりますけど、最後の戸締り、お願いしても良いですか?」
「あぁ、対応する。お疲れ様」
軽く会釈をした社員は、背中を向けて歩き出した。
残っているのは自分ひとり。その場でふーっと大きく息を吐いた。張り詰めていた気まで抜けていくようだった。
あともう少し。この仕事だけやり切りたい。
「コーヒー、飲むか……」
ぽつりと呟いた。ふと思い出したのは、朝比奈が淹れてくれたドリップコーヒー。
同じものを淹れているはずなのに、彼女が淹れたもののほうが美味しく感じるのはなぜだろう。
誰もいないはずのオフィスで、高瀬の独り言に返答した者がいた。
「コーヒー、淹れてきてあげようか? 帰る前に」
「えっ……」
ふいに落ちてきた言葉に驚いて、声のした方に顔を向ける。
そこには、安藤が立っていた。仕事ができる安藤は、石原を含め、複数の営業のサポートをしている。高瀬が仕事で関わることは、あまりない。
「いえ、自分で淹れるので大丈夫ですよ」
給湯室ではなく、リフレッシュルームの自販機に向かおうと立ち上がる。わざわざ声をかけてきた以上、何か用があるのだろう。なんとなく、避けたい気分だった。
「高瀬くんってさ、朝比奈ちゃんとうまくやれてる?」
「……うまく、ですか?」
突然、本題に入ってきた。
内心驚きつつも、予想通りという気もした。
先週、朝比奈が飲みに行くと言っていたし、そこで自分の話にでもなったのかもしれない。
朝比奈が、人のことを悪く言うとは思わない。でも、最近の自分の態度から、少し後ろめたさがあった。
「うまく、やれてると思ってますけど……安藤さんは、何が言いたいんですか?」
同じように、直球で返す。
安藤のようなタイプは、腹の探り合いをする必要がない。安藤が真っ直ぐこちらを見据えて、少し口角を上げた。
そんな中、国内営業部のフロアは煌々と灯りがついていた。
「高瀬さん、お疲れ様です。俺は先に上がりますけど、最後の戸締り、お願いしても良いですか?」
「あぁ、対応する。お疲れ様」
軽く会釈をした社員は、背中を向けて歩き出した。
残っているのは自分ひとり。その場でふーっと大きく息を吐いた。張り詰めていた気まで抜けていくようだった。
あともう少し。この仕事だけやり切りたい。
「コーヒー、飲むか……」
ぽつりと呟いた。ふと思い出したのは、朝比奈が淹れてくれたドリップコーヒー。
同じものを淹れているはずなのに、彼女が淹れたもののほうが美味しく感じるのはなぜだろう。
誰もいないはずのオフィスで、高瀬の独り言に返答した者がいた。
「コーヒー、淹れてきてあげようか? 帰る前に」
「えっ……」
ふいに落ちてきた言葉に驚いて、声のした方に顔を向ける。
そこには、安藤が立っていた。仕事ができる安藤は、石原を含め、複数の営業のサポートをしている。高瀬が仕事で関わることは、あまりない。
「いえ、自分で淹れるので大丈夫ですよ」
給湯室ではなく、リフレッシュルームの自販機に向かおうと立ち上がる。わざわざ声をかけてきた以上、何か用があるのだろう。なんとなく、避けたい気分だった。
「高瀬くんってさ、朝比奈ちゃんとうまくやれてる?」
「……うまく、ですか?」
突然、本題に入ってきた。
内心驚きつつも、予想通りという気もした。
先週、朝比奈が飲みに行くと言っていたし、そこで自分の話にでもなったのかもしれない。
朝比奈が、人のことを悪く言うとは思わない。でも、最近の自分の態度から、少し後ろめたさがあった。
「うまく、やれてると思ってますけど……安藤さんは、何が言いたいんですか?」
同じように、直球で返す。
安藤のようなタイプは、腹の探り合いをする必要がない。安藤が真っ直ぐこちらを見据えて、少し口角を上げた。