雨の日が苦手だった、私たちは
「やっぱり、高瀬くんは高瀬くんだねぇ。いや、朝比奈ちゃんは別に、高瀬くんのことを悪く言ったりしてないよ? むしろ、褒めてばっかり。ちょっと自信を失ってたけど」
「朝比奈が、自信を失ってたんですか……?」
どういうことだろう、と最近の朝比奈の様子を頭の中で思い浮かべる。
以前キスをしてしまったことはあったが、それ以降、特にいつもと変わらない様子だった。むしろ、自分の方が変に避けたり、仕事を振らなかったり、おかしかったと思う。それが、彼女の自信を失わせていたのか――。
「俺が、変に避けたりしたから、朝比奈が……」
「高瀬くん、朝比奈ちゃんのことを避けてたの? それについては、彼女は何も言ってなかったわよ。でも、避けてたのはどうして?」
「それは……」
――今まで、感じたことのない感情に気づいてしまったから。
でも、それにはすぐさま蓋をした。だから、ここで答えるべきは……。
「必要以上に、彼女に近づきすぎたなと。彼女の性格もあってといいますか、つい私も色々とお願いしてしまって、負担になっていたなと思いまして」
同僚相手だというのに、こうも他人行儀な言い方をしてしまう。
安藤は納得していないのか「ふーん……」と言って、こちらの様子をじっと観察していた。
「……そういえば、社長令嬢とのお見合いはいつの予定なの?」
「お見合いですか? 来週の土曜日ですけど。それが何か?」
「ううん、なんでもない。高瀬くんはさ、仕事はできるけどそっち関係は疎そうだから、年上からひと言」
「そっち関係ってなんですか」
「……まぁ、とにかく後悔しないように。朝比奈ちゃんも似たようなところがあるんだけど。二人とも、もっと自分のことを大事にしてほしいなって」
そう言われて思い出したのは、体調を崩した朝比奈のことだった。
でも、朝比奈だけではなく、自分まで「大事にしてほしい」と言われる理由があっただろうか——?
「朝比奈は分かりますけど……俺もですか?」