雨の日が苦手だった、私たちは

「高瀬さんは、私と同じタイプの方かと思っていましたけど……どうやら、少し違ったのですね。高瀬さん、今までかなりモテてきたでしょう? きっと、感情的になる女性もたくさん見てきたと思うのです。だから、結婚もビジネスというか、感情は不要だと考えるかと思っておりました」
「そうですね。以前の私だったら、そうだったと思います」
「じゃあ、あなたを変えたのは一体なんだったのですか? あ、これはもうお見合い関係なく、純粋に興味があります」


 サエに尋ねられ、真っ先に思い浮かんだのは朝比奈の顔だった。


「……同じ部署で働いている女性です」


 もしサエがお見合いに乗り気だったら、朝比奈の名前を出した時点で何をするか分からない。

 でも、無理やりお見合いを進める気がないのが、態度や言葉からもよく分かる。特に隠すことなく話すことにした。


「最初は、彼女のしていることは合理的じゃないと思っていました。いつも周りの“誰か”のことばかりを考えて、先回りして動いていて。雨の日には、誰かが寒い思いをしないようにと会議室の温度を上げていたり……」
「それは、私にはない発想だわ。会議室なんて、会議が進行できれば良いと思ってしまうし」
「はい、それは私も同じです。一度止めました。それでも、彼女はすでに会議室へ向かっていました。それ以外も……私には理解できないことばかりで。でも、その優しさを自分にも向けられて、気づいてしまったんです」
「それは、何に?」


 彼女は予想もつかないのか、首を傾げる。
 以前の自分だったら、サエと同じような疑問を持っただろう。
 彼女の問いに対する答えは、するりと口をついて出た。


「……感情は、ノイズじゃなかった。合理性だけでは、全てを片付けられないと気づいたんです」


 そう口にした瞬間、今まで蓋をしてきた感情までもが溢れてくるようだった。

 温かい気持ち、芽生える嫉妬心、抑えきれない衝動。――そして強い独占欲。

 綺麗な感情ばかりじゃない。それでも。
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