雨の日が苦手だった、私たちは

『本当、高瀬くんの会話って無駄がないよね。オッケー、このあとすぐ送りまーす』


 安藤から送られてきた番号に、改めてかけ直す。
 すると、2コールくらいで朝比奈が出た。知らない番号だったからか、「もしもし?」と恐る恐る出ているのが声で伝わる。


「もしもし、朝比奈? 高瀬です。休日にすまない」
『……えぇっ、高瀬さんですか? え、私何かやらかしましたかね? 一体どうして、』
「悪い、会って話がしたいから、今いる場所の住所を教えてくれ」
『え、今、実家にいるんですけど……』
「実家でも構わない。場所はどこでも良い。もちろん、ご家族の迷惑にならないよう、会ったらすぐに帰るから」


 数秒、静かな時間が流れる。何かを迷うような、そんな気配がした。


『……本当に、今から来るんですか?』
「行く」
『……分かりました。住所、言いますね』
 

 半ば押し切るように言うと、朝比奈は住所を教えてくれた。
 電話を終えると、自然と小走りになっていた。流しのタクシーを捕まえて、急いで自宅に戻る。自分の車で行くことにした。


(朝比奈が実家にいるって……まさか、向こうも縁談か? いや、退職の話? それとも……)


 もう少し落ち着いて、実家にいる理由を聞けばよかったのかもしれない。

 彼女を傷つけた後で、自分の気持ちに気付くなんて……もう間に合わないかと焦っていた。気持ちをぶつけても、困らせるだけかもしれないのに。
 だとしても——。


(このまま何もなかったことにする方が、絶対に後悔することだけは分かる)


 扱い慣れない感情で、今はうまくコントロールできない。
 はやる気持ちをなんとか抑えるように、車のハンドルをぎゅっと握りしめた——。


***
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