雨の日が苦手だった、私たちは
雨の日が苦手だったんじゃなくて、
「ご飯、本当に美味しかったね〜」
「うん。大輝くん、会わない間に随分大人になったねぇ」
「あはは、お姉ちゃんってば、孫じゃないんだから〜」
今日は妹・杏奈との結婚を予定している、大輝の家族と両家で食事会が開催された。萌衣が大輝と会うのは、かなり久しぶりだった。
父の運転で実家に到着すると、早々に自室に戻り、着ていたワンピースを脱いでゆったりした服に着替えた。
ふとスマホを手に取り、通知がないか確認してしまう。
(高瀬さん、本当にうちに来るのかな……)
食事会が終わってレストランを出た直後、突然見知らぬ電話番号から着信があった。
いつもだったら知らない番号は出ないけれど、なぜか、この時は出てしまった。
まさかの高瀬からの電話で、萌衣は驚いた。本当に来るのかと確認すると、高瀬は「行く」と迷いなく返してきた。
高瀬が来ることを思い出し、改めて自分の服装を確認してしまう。
(……こんな、ゆったりした服装で大丈夫かな。わざわざ会いに来るなんて、私、仕事で何かやらかしたのかな。それとも……)
一瞬、自分に都合の良い考えが浮かびそうになるも、すぐに打ち消した。
勝手にキスをされて「ごめん」と言われた時のように、期待して傷つくのはもう嫌だから。それに、高瀬のお見合いはきっと前に進んでいるだろうから。
(会ったらすぐ帰るって言ってたし、きっと大丈夫)
うん、とひとり納得していると、一階から父の声が飛び込んできた。
「おーい、萌衣、杏奈。一緒に酒飲まないか〜」
隣の部屋から、杏奈が「はーい」と明るく返している声が聞こえた。萌衣もすぐに自室を出て、階段を降りていく。
リビングでは、父がたくさん酒瓶を並べていた。
食事会ではお酒を飲んでいなかったし、家に帰って気が抜けて、急に飲みたくなったのだろう。キッチンから現れた母は、父の様子を見て笑っていた。