雨の日が苦手だった、私たちは

「もう、お父さんったら、帰って早々お酒を飲みたくなっちゃったみたいで。萌衣も杏奈も、無理して飲まなくて良いから。ちょっと付き合ってあげて」
「うん、あ……ごめん、会社の人が用があるみたいで、こっちに向かってて」
「あら、そうなの? 何かトラブルかしら?」
「そういうわけじゃないと思うんだけど……でも、もしものこともあるから、お酒は後にするね」
「えーお姉ちゃん、何の話〜?」


 ひょこっと後ろから杏奈が顔を覗かせている。しかも、含みを持たせたような笑みを浮かべていた。


「ねぇ、その人って男の人? 女の人?」
「男の人」
「えー、お姉ちゃんに会いに来たんじゃない? え、もしかして、付き合ってる人!?」
「ううん、そういうわけじゃないよ」


 萌衣がそういう話をしたことがないからか、杏奈も母も、目を輝かせている。対して父は、むすっと拗ねているようだった。萌衣は努めて冷静に、念を押すように言った。


「……だから、彼氏とかじゃなくて、同じ会社の人だってば。ほら、杏奈はお酒飲んだら?」
「うん、そうする。もしこれから来るんだったらさ、夕飯、うちで食べてもらったら? ねぇ、お母さん」
「えっ、それは……」
「あら、良いじゃない! 一緒に食べてもらいましょうよ。お父さんも良いでしょう?」
「……杏奈だけじゃなくて、萌衣も男を連れてくるようになったか」


 がっくりと肩を落とす父を見て、杏奈と母は声を出して笑っている。

 ご飯を食べてきたばかりということもあり、みんなでお酒を飲みながら、アルバムを引っ張り出して写真を見ることにした。
 父は歳と共に涙もろくなったのか、それともお酒のせいなのか、時折「こんなに小さかったのになぁ……」と鼻声で呟いていた。

 あっという間に時間は流れ、最初に高瀬から電話を受けて2時間くらい経った時だ。

 再び電話があり、家族がいるリビングを離れてひとりになった。ふう、と小さく息を吐き、通話ボタンをタップした。

 
「もしもし、朝比奈です」
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