雨の日が苦手だった、私たちは
「高瀬くんはお酒が飲めないのか、残念だな〜」
「すみません。私の分も、ぜひたくさん飲んでください」
そう言って、陽は追加のお酒を注いだ。
お酒が飲めない話は早々に終わり、父の趣味であるゴルフの話になっていた。陽はどんな話題でも自然に会話を広げて、相手を気持ちよくさせるのが上手い。
賑やかな晩ご飯は、父が酔い潰れたことで幕を閉じた。母に買い出しを頼まれた萌衣は、陽と二人並んでコンビニへ向かった。
「……結構、賑やかなご家族なんだな」
「すみません、ああいう感じで……」
「いや、俺の実家はこういう感じじゃないから、新鮮に感じただけ。みんな、良い人だ。萌衣と同じで」
「ふふ、ありがとうございます」
陽の家族はどんな人たちなのか、少し気になった。でもそれはきっと、彼が話したいと思えるタイミングで話してくれるだろう。
今は踏み込むより、陽が感じたことをただ受け止めたいと思った。
萌衣はふと、空を見上げる。
見慣れた住宅街、澄んだ空気。遠くからは虫の声が聞こえてきた。横を見ると、陽も同じく夜空を見上げていた。
しばらくしてコンビニに着くと、陽がかごを持った。
「何を買うんだ?」
「えっと、お水と氷と、牛乳ですね」
「そうか。あ、スイーツが新しいラインナップになってる」
「ふふ、陽さんはちゃんとコンビニスイーツもチェックしてるんですね」
くすくす笑っていると、陽は照れを隠すように頭をかいた。必要なものをかごに入れていき、最後にスイーツ売り場の前に立つ。
「陽さん、どれが良いですか?」
「いや、良いよ。この後車で帰るし……」
「あ、そっか、ごめんなさい。もう遅いですし、うちに泊まりますか?」
「あー……」
一瞬、陽は何かを考えるように視線を逸らした。
「同じ部屋で寝るとか、我慢できる気がしないよな。もちろん、実家で手を出すようなことはしないけど」
「ふぇ……?」
その言葉の意味を数秒遅れで理解し、萌衣の顔が一気に赤くなる。
今まで一緒に仕事をしてきた“高瀬陽”と同じ人なのかと、つい疑ってしまう。恥ずかしさをかき消すように、萌衣は声を出した。