雨の日が苦手だった、私たちは
「あの、スイーツ食べてから帰るんじゃだめですか?」
「んー、そうだな、急ぎじゃないし」
「もう少し、一緒にいたいです……」
萌衣がそう言うと、次は陽の顔がほんのり赤くなった。
目の前に並ぶのは、シュークリームにプリン、どら焼きにケーキ。陽は無言で、抹茶プリンに手を伸ばした。
「俺は抹茶プリンにする。萌衣は?」
「えっと、それじゃあ私は、ミルクプリンで……」
「決まりだな」
お会計を終え、コンビニを出る。
夜風のせいか、さっきよりもひんやりとした空気が頬をなでた。
陽は当たり前のように、レジ袋を萌衣の手から取って持つ。もう片方の手を、萌衣に差し出した。
「行くぞ」
「え、あの……」
「手、繋がないのか?」
「手、繋ぐんですか?」
「恋人になったんだから」
そう言われ、萌衣はおずおずと手を差し出した。
陽の言葉や行動ひとつに、胸がどきどきしてしまう。
でも、何をするにも、陽は無理に押し付けてくることはない。萌衣のペースに合わせるように、一つひとつ言葉にして確認してくれる。その優しさに、胸が温かくなった。
結局、二人は手を繋いで並んで歩き始めた。
「寒くなってきたな……。上着、俺の貸そうか?」
「いえ、大丈夫です。ふふ」
「どうした?」
何が面白いのかと、陽は不思議そうに萌衣の顔を見た。
「いえ、そうやって気を回してくれるのが、少し不思議だなぁって。出会った頃、私が先回りして何かやると『そこまで気を回す必要があるのか?』って言ってたのを思い出して」
「まぁ、こうやってあれこれしたくなるのは、萌衣限定だと思うけどな」
「そう、なんでしょうか?」
当時のことを思い出したのか、陽は決まり悪そうに視線を落とした。
そして突然、思い出したように話を切り替えた。
「そういえば。明後日から、会社ではどうする?」
「周りに関係を言うかどうか、ですか? あ……会社で思い出したのですが、私、社長令嬢から恨まれたりしていないんでしょうか?」