雨の日が苦手だった、私たちは

エピローグ

 目の端に光を感じ、萌衣は少しずつそれを受け入れていく。瞼を軽くこすりながら隣を見ると、既にこちらを見ていた陽と目が合った。


(そうだ、昨日は初めて陽さんの家に来て、それで……)


 昨日の出来事を思い出していると、陽が萌衣の頭を優しく撫でた。


「萌衣」


 甘さを含んだその声に慣れず、すぐに声が出ない。次の瞬間、陽の腕の中に閉じ込められた。彼の体温がじんわり伝わってくる。


「今日の予定は?」


 耳元で囁かれ、心臓が大きく跳ねた。
 先週思いが通じ合って、その次の週末には早速陽の家に泊まった。今は、ベッドの上で一緒に朝を迎えたばかりだ。今日も陽と過ごすつもりで、特に予定は入れていない。


「予定は入れてない、です……」
「まだ敬語が抜けないな。昨日はあんなに素直に……」
「!? それっ、言わないで……!」
「はは、ちょっと揶揄(からか)っただけなんだけどな」


 くつくつと楽しそうに笑っている。
 陽はスマホで天気予報を確認したらしく、「今日は晴れだな」と呟いた。

 一緒にいる日は、なぜか雨ばかりだったのに。
 結局、この日は陽のスイーツ巡りに付き合うことになった。
 

 付き合い始めて会社ではどうするのか、あまりちゃんと話し合わずにそのまま平日が始まってしまった。萌衣は週初めの出来事を思い出して、むすっとした顔をしてしまう。

 先ほどまでスイーツの話を楽しくしていたのに、急に萌衣が無言になったものだから、陽は萌衣の顔を覗き込んだ。


「どうした? スイーツ、やっぱりやめとくか?」
「ううん、そうじゃなくて……月曜日のことを思い出してた」
「あー……なるほど、うん。今日は俺がスイーツをご馳走するから、それで機嫌を直してくれないか?」
「陽さんは悪くないんだけど。なんていうか、社長令嬢にはびっくりしたというか」


 そう言って、萌衣は月曜日のことを思い返した。





(陽さんと恋人になったけど、会社ではしっかりしなきゃ……!)
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