雨の日が苦手だった、私たちは
提携の背景をざっくり知っていた萌衣も、こうして山見と高瀬が直接話す場面を見るのは初めてだ。
ただ、応接室に入って数分で、萌衣には二人の間に割って入れないものがあると感じた。
萌衣を意識して敬語を使っていた山見も、高瀬に向き直ると、どこか砕けた口調になる。
「山見さん、今日は原材料の値上がりの件でご相談でしたよね」
「あぁ、そうなんだよ。このご時世、致し方ないんだが……うちの技術は人ありきだから、人件費を下げるわけにもいかなくてねぇ」
ちらりと、山見が高瀬の様子を伺う。
もちろん高瀬は、山見が何を言いたいのか、それに対する解決策まで用意してあった。
「はい、もちろんです。人件費を下げる必要はありません。自動車メーカーには、来期の見積もりに上乗せして提案してありますので」
「おお、さすが高瀬くん。理解があって助かるなぁ。……ね、朝比奈さん。高瀬くんはすごいでしょう?」
山見に笑顔を向けられ、萌衣もにこりと笑みを返す。
きっと高瀬は、期待を持たせるようなことは言わない。となると、もう自動車メーカー側と調整が出来ているのだろう。
値上げもOK、という言質はとっているはずだ。
「高瀬くんは、うちの社員のことまで大事に考えてくれるんですよ。だから信頼できるし、高瀬くんから少し無理な依頼をもらっても、全力で応えたいと思う。今まで、そうやってやってきたんです」
「そうだったんですね……」
オフィスでデスクワークをしているだけでは、見えなかった一面がそこにはあった。高瀬の仕事に対する姿勢に、萌衣の胸が熱くなる。
山見は突然、「あぁ、そうだ!」と何か閃いたように声を出した。
「今度、うちの若いもんも含めて、一緒に飲みに行きましょう。ほら、朝比奈さんの歓迎会ということで。いかがかな?」
「朝比奈、どうだ? せっかくだから」
高瀬は、隣に座る萌衣に視線を向ける。
萌衣は「ぜひ!」と大きく頷いた。そこで、はたとあることに思い当たった。
(高瀬さん、前に飲み会で見た時も、全然お酒を飲んでなかったけど……接待の時はどうしているんだろう?)
そんなことが一瞬頭を過ったものの、すぐに目の前の二人の会話に集中した。
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